FIRE達成者Kです。FIREがますます注目を集める一方で、昨年末には「FIRE卒業」というワードがSNSを中心に話題となりました。今回は、FIRE達成後に存在するリスクについて解説いたします。
<FIREとは?>
FIREとは「Financial Independence, Retire Early」の略語で、「経済的自立をして早期リタイアする」という意味です。
欧米を中心に徐々に流行し始め、2020年前後から日本でも注目されている新しいライフスタイルです。
特に、コロナウイルスの影響により働き方に変化のあった近年では、若い世代を中心にFIREを目指す人たちが増えています。
<FIREと従来のアーリーリタイアの違いとは?>
FIREは「アーリーリタイア」とほぼ同じ意味で使われることがありますが、達成後の生活、特に経済的自由の違いは大きいと言えます。
従来のアーリーリタイアは、大きな資産を形成した後は特に働かなくても、その資産を取り崩していくだけで一生遊んで暮らせるような状態のことを指しています。
それに対して、FIREはリタイア後の年間生活費(想定支出額)の25倍の資産を形成し、その4%の運用益を出せれば、資産を減らさずに生活できるという考えの基に成り立っています。
この理論は、アメリカのトリニティ大学が1998年に発表した研究結果で、「トリニティスタディ」と言われています。
FIRE可能な資産が形成できた後は、ライフプランを見直し、運用資産の4%以内に生活費を抑えることができれば、資産(元本)は減らさずに生活を維持できるという考え方です。
従来のアーリーリタイアは、労働はもちろん、投資などで不労所得を得る必要もない、完全な経済的自由を得た状態を指す場合が多いと考えられています。
一方で、FIREも経済的自立とは言っていますが、投資で年間4%以上利益をあげることが絶対条件となります。
これはお金や投資に縛られた状態であり、従来のアーリーリタイアと比べると経済的な自由度は低いと言えます。
<4%ルールの呪縛>
米国株の過去の平均パフォーマンスや、日本の高配当株の配当利回りやREITでの運用利回りを見ると、個人で投資できる金融商品で4%以上の運用益を得ることは現実的に可能と考えることができます。
しかし、これを実現するためにはまず、マーケットが安定的に上昇相場である必要があり、毎年必ず4%以上の運用益を上げることができると考えるには、不確実な部分が多いと言えます。
実際、2022年にドル建てでS&P500に投資していた場合、年間で20%弱の資産が目減りしたことになります。
仮に5000万円を集中的に投資していたら、4000万円になってしまったという状況です。
この場合、通常ならマーケットの回復を待って損失を確定しないこともできますが、FIREのように安定した給与収入がない場合、心理的な不安から冷静な判断・取引ができず、FIREを継続することが難しい状況になってしまうかもしれません。
4%以上で運用しなければならないというFIREの条件は、簡単ではないと考えます。
実際に、FIRE達成後に運用が上手くいかず、再就職するケースも増えてきたことから、「FIRE卒業」というワードがSNSで話題になりました。
<FIRE達成後のリスクとは?>
FIREを達成しても、その後継続できるかどうかは別問題で、様々なリスクが存在します。
次はどのようなリスクがあるのかを考えていきます。
・インフレによる支出の増加
FIRE発祥の地であるアメリカでは、4%ルールは7%の運用益から3%のインフレ率を差し引いた数値であるという見解もあり、インフレリスクは事前に想定されています。
日本は欧米ほどのインフレ率ではなかったために、インフレリスクはさほど考慮されていなかった印象があります。
しかし近年では、急激な物価上昇が進み、光熱費も高くなってきています。
このように、物価上昇により生活費が想定以上に上がってしまうことは、FIREにおいては大きなリスク要因となります。
・税制の変更
現在、株式などによる金融所得の税率は、基本的に20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)と定められています。
しかし、将来的に金融税制に変更があり、税率が高くなる可能性も考えられます。
FIREにとって、金融商品にかかる税制変更はリスクのひとつです。
・金利リスク
日米の金利差の変動により、マーケットも大きく変動します。
特にドル建て商品に投資している場合、為替変動リスクは大きくなります。
ドル建ての商品は、基本的に円安になれば評価額は高くなりますが、逆に円高になれば評価額は目減りします。
運用益だけでなく、為替変動による評価損益もリスク要因となり得ます。
・病気やケガなどによる大きな出費
自身や家族の病気や事故などによる思わぬ出費に関しては、事前に予測することができないため、資金計画に入れることは難しい項目です。
しかし、誰にでも起こる可能性がある以上、その資金を考えておく必要はあると思います。
<FIRE継続に必要なこと>
私は経験上、FIREは“FI”と“RE”を分けて考えるべきだと思っています。
RE(早期退職)だけを目指してしまうと、十分な資産形成や計画がなされないまま、見切り発車となることがあるからです。
この場合、肝心なFI(経済的自立)がなされていない状況となり、早期退職してもすぐに破綻してしまう可能性があります。
FIRE達成後に存在するリスクを十分に考え、様々な不確実な状況に対応できる想定をしてからFIREをするべきだと考えます。
また、投資は絶対に利益が出るものではないことを理解し、他に収入源を持つことはFIREには大切なことだと考えます。
「サイドFIRE」や「バリスタFIRE」といった種類のFIREであれば、投資の収益だけではなく、労働収入や副業での収入を計画に入れることができるため、不確実性を減らせます。
これは、金銭的な面だけでなく精神的な面でも楽であり、日本でFIREを目指すなら「サイドFIRE」が最適だと個人的には考えています。
<良い準備が重要>
FIRE達成後に継続できなくなる理由のほとんどが金銭面の問題だと思いますが、一部には時間を持て余してしまい生きがいを失って再就職する人もいるようです。
FIREは、万人に向いているわけではありません。
むしろ、向いている人・向いていない人がはっきり分かれるライフスタイルだと感じています。
また、FIREは達成すること自体がゴールではなく、そこから継続していくことが重要です。
FIREを達成した本人や家族が楽しくないと意味がありません。
FIRE生活を楽しく過ごし継続性を持たせるには、事前の準備が最重要です。
自身のライフプランを見直し、資金計画はもちろん、FIRE達成後に何がしたいのかを具体的に計画することが大切です。
今回は、FIRE達成後のリスクについてお話ししました。このリスクは、FIRE達成者だけでなく投資をしている人全般に当てはまることだと思います。投資前後に様々な想定をして、あらゆるリスクに対応できる準備をすることは大切なことだと思います。