インフラファンドは、REITとよく似た仕組みの金融商品です。REITの投資対象がオフィス、住宅、物流・商業施設などの不動産であるのに対して、再生エネルギー関連施設や空港・道路などのインフラ資産に投資するのがインフラファンドです。分配金をメインとしたインカムゲイン狙いの投資として注目を集めています。今回は、インフラファンドの特徴とメリット・デメリットを解説していきます。
<インフラとは?>
最初に、インフラとはインフラストラクチャーの略語で、英語ではinfrastructureと書きます。
直訳すると「基盤」という意味ですが、生活の基盤を支える社会資本施設の意味で使われています。具体例としては、電気、ガス、水道、電話、ネットワーク、鉄道、公共施設などが挙げられ、社会や経済、日常生活に必要不可欠なものを指しています。
<インフラファンドの仕組み>
インフラファンドとは、太陽光発電などの再生エネルギー関連施設に対して投資を行い、その施設の運営による収益を分配金として受け取ることができるファンドです。
インフラファンドは投資法人が運営し、複数の投資家から資金を集め、インフラ施設を購入します。これを発電会社などに貸し出し、賃料収益から投資家に分配金を支払う仕組みです。
<インフラファンドの歴史>
2015年4月にインフラファンド市場が設立され、2016年6月にタカラレーベン・インフラ投資法人が東京証券取引所に上場しました。
次に、いちごグリーンインフラ投資法人、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人、東京インフラ・エネルギー投資法人、エネクス・インフラ投資法人、ジャパン・インフラファンド投資法人が東京証券取引所に上場しました。
その後、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人、タカラレーベン・インフラ投資法人は、TOBにより非公開化されました。
上場商品のインフラファンドは、REITや株式と同じく証券会社を通じて売買が可能で、NISAの対象商品でもあります。
また、2020年4月からは「東証インフラファンド指数」が算出・公表されています。
これは、上場しているインフラファンドを加重平均して算出される指数です。
<インフラファンドのメリット>
次に、インフラファンドのメリットを説明していきます。
・少額からインフラ設備に投資可能
インフラファンドの投資対象である太陽光発電などの再生エネルギー関連施設は、大規模なため建設や運営に莫大な資金が必要となります。
そのため、従来は個人が投資したくても資金的なハードルが高く、簡単に投資できる分野ではありませんでした。
インフラファンドが上場されたことにより、10万円ほどから手軽に投資することが可能となりました。
・高い利回りが期待できる
インフラファンドの魅力のひとつは、高い分配金利回りです。
上場株式の平均利回りは約2%、REITは3%台後半から4%台が利回りの平均となっています。
一方、インフラファンドの分配金利回りは5%から6%台で、他の商品に比べて高利回り商品となっています。
・キャピタルゲインも狙える
上場されているインフラファンドは、株式などと同様に証券取引所の取引時間中には価格変動があります。
そのため、購入したファンドが値上がりした場合に売却すれば、売買益を狙うことも可能です。
インフラファンドは株式やREITと同じく、分配金(配当金)のインカムゲインと、売買差益のキャピタルゲインの両方を享受できる可能性がある商品です。
・景気動向に左右されにくい
株式は景気動向に左右されやすい商品ですが、一般的にインフラファンドは景気の影響を受けにくいと考えられています。
エネルギー消費は景気に関係なく行われるため、収益が安定しやすいとされることがその理由です。
また、インフラファンドには「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)」という仕組みが適用されています。
固定価格買取制度とは、再生エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定期間一定価格で買い取ることを保証する制度です。
これにより安定的な運用が期待できます。
・分散投資になり得る
インフラファンドは、同じ上場商品でも株式やREITとは違う値動きをすることが多いため、他の商品との分散投資になり得ます。
株式が大きく値を下げる場面でも、同様には値下がりしない可能性があり、リスクヘッジとして機能する場合があります。
<インフラファンドのデメリット>
メリットが多いインフラファンドですが、当然デメリットもあります。
・金利上昇リスク
昨年末には日銀の金利政策の変更があり、それによる金利上昇懸念がマーケットに影響を及ぼしました。
インフラファンドを運用する投資法人は、再生エネルギー関連施設を購入するにあたって、金融機関から借入れをしています。
金利が上昇すると返済の負担が増えるため、財務状況の悪化に繋がる場合があります。
・価格変動リスク
インフラファンドは株式と同じく、運営する投資法人の個別の状況により投資口の価格が下がる(価格変動)リスクがあります。
また、運用が想定通りにいかない場合は、分配金が減少するリスクがあります。
・固定価格買取制度終了リスク
現在は、固定価格買取制度により安定した運用ができていますが、これは一定期間中に一定価格で買い取る制度のため、この制度が終了した際には状況が大きく変化する恐れがあります。
また、発電した電気の買取価格は年々下がってきており、制度終了後は不透明な部分もあります。
・公募増資による希薄化
インフラファンドは、新たに物件・施設を取得する際に大きな資金が必要となるため、定期的に公募増資を行うことがあります。
公募増資を行うと発行口数が増加し、一口当たりの価値が希薄化するため、短期的には売られる材料となる可能性があります。
・流動性が少ない
インフラファンドの市場規模は株式やREITに比べると小さく、出来高が少ない銘柄もあります。
運営する投資法人に大きな材料が出た時などの相場急変時には、大きな価格変動が起こり、売りと買いの価格が合致せず希望の価格で売却できない可能性があります。
<ESG投資としてのインフラファンド>
インフラファンドは、再生エネルギー発電という環境問題に取り組み、社会に貢献する事業であることから、ESG投資としての側面を持ち合わせることも大きな特徴です。
最近は投資が単なる利益追求だけではなく、社会貢献に繋がることが求められる市場環境になってきており、年金などの組織や機関投資家もESG投資を組み入れる傾向が見られます。
<おすすめの投資方法>
インフラファンドは、デメリットで挙げたように市場規模が小さく取引量が少ないため、売買価格にばらつきが出ることがあります。
投資する場合は集中的に買い付けるのではなく、積立での買い付けなどで投資機会の分散を心がけることが大切です。
今回は、インフラファンドの特徴とメリット・デメリットを解説してきました。ネット証券でも取引でき、10万円ほどで投資可能な上場商品のため、初心者が始めやすいメリットもあります。比較的高利回りのためリスクもありますが、株式との分散投資にもなるため注目度が上がっています。この機会に、インフラファンド投資を検討してみてはいかがでしょう。