近年は、投資の分野においてもAIの活用が増えており、個人でも利用できるロボアドバイザーは新たな投資サービスとして注目を集めています。今回は、ロボアドバイザーの概要とメリット・デメリットについて解説いたします。
ロボアドバイザーとは?
ロボアドバイザーとは、AI(人工知能)を活用して投資のアドバイスや運用などを行うサービスのことです。
これは、従来の人間のファイナンシャルアドバイザーが行っていた業務の一部をコンピューターが自動的に行うもので、投資家がいくつかの質問に回答すると、AIが独自のアルゴリズムを用いて、そのリスク許容度や目的に合った資産配分の提案や運用管理を行うことが特徴です。
投資家は、提案されたポートフォリオに沿って投資を実行するかを検討し、利用するサービスによっては、運用も含めてロボアドバイザーに任せることができます。
採用するアルゴリズムや細かなサービスの内容は事業者によって異なりますが、人間が見落としがちな視点も活かしながら投資ができる等のメリットから、ロボアドバイザーは徐々に普及が進んでいます。
ロボアドバイザーの起源
ロボアドバイザーは2000年代初頭に米国で発祥しましたが、日本においても、テクノロジーの進歩や金融のデジタル化に伴い、2016年頃から認知が進み、その自動化された投資のプロセスが注目を集めました。
初期のロボアドバイザーのサービスは、ポートフォリオの自動再調整(リバランス)を中心に提供されていましたが、その後、AIや機械学習の発展により、より高度なアルゴリズムを基に、個々に最適化された投資戦略が提供されるようになりました。
ロボアドバイザーの普及により投資家の選択肢は増え、最近は個人投資家や投資初心者でも投資がしやすい環境になってきています。
実際に、資産の一部をロボアドバイザー投資にまわす人が年々増えていることからも、ロボアドバイザーが資産運用の手段の一つとして広く認知されつつあることがわかります。
アルゴリズムに基づく投資とリバランスの自動化
ロボアドバイザーは、プログラム化されたアルゴリズムを用いて市場データを分析し、投資家のプロファイルに応じて、自動的に資産配分の提案や運用を行います。
これにより、人間の感情や主観に左右されることなく客観的な投資判断を行うことができる点が特徴とされています。
また、サービスによっては、投資家のリスク許容度や投資目標に合わせて適切なポートフォリオを構築するだけでなく、運用期間中に、市場環境の変化や投資対象のパフォーマンスに応じて目標とするポートフォリオから乖離が生じた場合には、自動的に資産配分を調整して理想的なバランスを維持する機能もあり、これにより、リスクを最小限に抑えながら効率的にリターンを追求することができると言われています。
メリット ○
ロボアドバイザーを利用するメリットは次の通りです。
・低コストで少額から資産運用ができる
ロボアドバイザーは、自動化されたプロセスにより、従来の人間のファイナンシャルアドバイザーに比べ運用にかかる手数料を低く抑えることができます。
また、投資の金額についても、数百円からのものやポイントを利用できるものもあり、気軽に手間をかけずに投資をしたい人には合った手法と言えます。
コストの低さは運用が長期になるほど重要となり、複利の効果を最大化するのに役立ちます。
・利便性が高い
ロボアドバイザーは、原則24時間365日オンラインで利用が可能で、投資家は自身の投資状況をいつでも確認することができます。
また、多くは直観的に操作がしやすく、ダッシュボードやレポートもわかりやすく設計されているため、投資の専門的な知識がなくても簡単に利用できると言われています。
さらに、スマートフォンのアプリを利用すればどこからでもアクセスが可能なため、投資家は自身のスケジュールに合わせて投資の管理ができ、市場の変動にも素早く対応することができます。
・感情に左右されない取引が可能
ロボアドバイザーは、アルゴリズムによる市場のデータ分析結果や一定のルールに基づき、機械的にロスカットや買い戻しなどの投資判断を行います。
そのため、市場の短期的な変動や感情的な判断により損失を被るリスクを抑えることができます。
・さまざまな商品へ分散投資できる
ロボアドバイザーは、自動でさまざまな投資商品にアクセスし、最適なものを選択・購入するため、効率よく分散投資を行うことができます。
また、ポートフォリオの自動管理機能により、リバランスも適切なタイミングで行われるため、リスクの低減効果が期待できます。
デメリット ×
一方で、ロボアドバイザーには以下のようなデメリットもあります。
・損失になる場合もある
ロボアドバイザーは投資商品のため、元本の保証がなく、相場状況によっては元本を割り込む場合があります。
また、アルゴリズムに基づき個人の運用スタイルに合った商品の提案や運用を行ってくれますが、完全に自動化されたシステムのため、個々の細かなニーズや市場の急激な変化に対応する(能力)には限界があります。
利用時は、運用が上手くいかないケースや、損失が生じる可能性もあることを認識したうえで適切なサービスを選択することが重要です。
・短期間で大きなリターンは望めない
ロボアドバイザーの多くは、長期の分散投資を前提とした商品設計となっており、リスクを抑えつつ中長期的にリターンを追求することができる一方で、短期的に大きな利益を上げたい人には向かない傾向があります。
また、人間のファイナンシャルアドバイザーと比べ、意思疎通が限定的または皆無であるため、投資家の求めるリスクとリターンのバランスを完全には再現できないケースもあります。
・投資スキルアップになりにくい
ロボアドバイザーは、運用やリバランスもすべて自動化されている場合があり、利用者にとっては投資の知識や経験が身につきにくいと言われています。
そのため、投資の実践的な経験を積みたいと考える人、スキルアップを望む人には不向きな手法と言えるでしょう。
ロボアドバイザーの将来は?
ロボアドバイザーは、今後、AIの進化や市場パターンの学習により、より高度な投資判断や勝率の高いトレードができるようになるかもしれません。
過去の市場データや情報を分析し、最適な戦略を立て、投資を実行するという一連の処理のスピードが向上する期待もあります。
また、今後は新興市場(ベンチャー企業が多く上場する市場)や開発途上国においても普及が進むと予想されており、激しい市場の変化にも柔軟に対応できる能力が備わる可能性もあります。
将来、これらが実現され、ロボアドバイザーが個々の投資家の目標やリスク許容度、ライフステージなどに応じてよりパーソナライズされたポートフォリオを自動的に構築できるようになれば、資産運用の有用なツールとしての活用が増え、投資家にとってますます重要な存在となっていくことでしょう。
今回は、ロボアドバイザーの特徴やメリット・デメリットについて解説いたしました。実際に、継続的に安定した利益を出しているロボアドバイザーもあり、その存在価値は高まっている印象があります。米国や英国に比べ資産構成における現金の割合が大きい日本においては、ロボアドバイザーのような新しいオプションの選択が、金融リテラシーの向上に貢献してくれるかもしれません。