近年、不動産クラウドファンディング市場は拡大基調で、事業者の参入も増加しており、注目度が上がってきています。少額から不動産投資ができ、価格変動がなく、投資後も管理の必要がないため投資初心者にも向いている点など、メリットが多い不動産クラウドファンディングですが、当然デメリットも存在します。今回は、そのデメリットを知ることで、不動産クラウドファンディングをより深く理解していきましょう。
元本は保証されていない
不動産クラウドファンディングは、株式などの他の投資商品と同じく、元本が保証されていません。
そもそも元本保証とは、運用の結果に関わらず、投資したお金(元本)が運用中に減らないことを約束するものですが、投資商品における元本保証は、出資法などの法律で禁止されています。
不動産クラウドファンディングのファンドは、運用状況や運営事業者の状態により、分配金が減少したり、元本の一部または全額が返還されないリスクがある点で注意が必要です。
このように運営会社の信用リスクも関わるため、事業者の選択は重要となります。
運営会社の規模や財務状況を調べたり、上場か非上場かなどを確認したりする必要があります。
また、事業者やファンドによっては、「優先劣後構造」や「マスターリース契約」などの投資家を保護する仕組みが採用されているものもあります。
優先劣後構造とは、投資家と一緒に事業者もファンドに出資を行い(投資家の出資金を「優先出資」、事業者の出資金を「劣後出資」とし)、運用による損失が出た場合には先に事業者の出資金から負担することで、劣後出資の割合までは投資家の出資元本が棄損しないという仕組みです。
マスターリース契約とは、運用物件の空室や入居者の家賃滞納等が生じた場合でも、一定の賃料収入が保証される仕組みです。これにより、分配金の減少リスクが低減されます。
保護の範囲(割合)などの諸条件は案件毎に異なるため、ファンド概要やリターンの項目から確認する必要がありますが、これらの投資家保護の仕組みが採用されているファンドであれば、分配金や元本減少のリスクを減らすことができます。
換金性・流動性が低い
不動産クラウドファンディングのファンドは、運用が始まると、途中で売却や解約ができないものが多く、急に資金が必要になった場合でも、事業者が定めるやむを得ない事由に該当しない限り、運用期間中に投資したお金を引き出すことはほとんどできません。
一方で、同じ不動産を対象としたREIT(不動産投資信託)は、証券取引所に上場しているため、市場がオープンしている間は証券会社を通じて売却ができ、ほとんどの場合、その日のうちに換金することができます。
その点、不動産クラウドファンディングは、上場していないため決まった取引所がなく、換金性・流動性が低いことがデメリットと言えます。
不動産クラウドファンディングに投資をする際は、使う予定がない余剰金から出資するように心がけることが大切です。
融資を利用できない
現物不動産投資を行う投資家のほとんどは、金融機関から融資を受けます。
融資を受けることで、自己資金以上の取引ができ、投資効率を高められるというメリットがあります。
一方、不動産クラウドファンディングには融資がないため、投資額は全額自己資金となります。
そのため、レバレッジ効果(資金力がない場合に大きな収益)は望めませんが、その分、リスクは限定的で、初心者でも始めやすい投資と考えることができます。
なお、不動産クラウドファンディングには、資金調達の一部に金融機関からの借入を含むファンドもあるため、ファンド概要は十分に確認するとよいでしょう。
人気のファンドには投資できない場合がある
不動産クラウドファンディングは、事業者やファンドによっては人気が高いものもあり、ファンドの募集金額を大きく超える申込がある場合があります。
ファンドの募集方式には「先着方式」と「抽選方式」があり、先着方式の場合、募集開始と同時に投資家の応募が殺到し、わずかな時間で完売となり、投資できないケースもあります。
予め投資手順やファンドの内容を確認したり、投資額を決めたりしておくと、募集開始時に手早く応募することができます。
抽選方式の場合は、募集期間中は応募が可能ですが、その後の抽選で当選しないと投資ができません。
ファンドをよく分析して投資資金を用意しても、投資ができないことで資産の運用計画が変わってしまうこともあります。
しかし、抽選に応募し続ければ当選することもあるため、優良な事業者のファンドに継続的に応募することも一つの方法と言えます。
税制上のメリットが少ない
不動産クラウドファンディングは、事業者が所有する不動産に投資を行うことから、投資対象物件は自分の名義にはなりません。
「匿名組合型」のファンドに投資する場合、投資家は不動産を所有することにならないため、基本的に税制上のメリットはありません。
不動産を所有していれば、所得税や住民税の節税が可能となり、相続の際は相続税の節税になります。
つまり、不動産クラウドファンディングでは、現物不動産投資では得られるこのような税制上のメリットが得られないことになります。
節税対策をしたい場合には、不動産クラウドファンディングではなく、現物不動産への投資の方が適しています。
不動産クラウドファンディングでは、分配金の利益に対する税区分は雑所得となります。
雑所得は他の雑所得と損益通算が可能で、FXや暗号資産の取引で損失が生じた場合は、確定申告することで還付される可能性があります。
短期間で大きなリターンはない
不動産クラウドファンディングは、想定利回りが2%〜6%台のものが多く、運用期間が予め決まっていることも特徴です。
一部のファンドを除き、想定利回りを超える分配はないため、投資期間中に大きな利益を上げられる可能性はほぼありません。
また、株式やFXなどと異なり、価格変動に伴う売買差益が発生しないことも、リターンが比較的少ない要因の一つです。
しかし、このデメリットは堅実な資産運用を考える人にはメリットとなります。
想定を上回る利益はないものの、無事に運用が終われば当初予定していた分配金がもらえるため資金管理が容易で、次の投資に備えることができるなど、運用資産全体の計画も立てやすい点はメリットと言えるでしょう。
今回は、不動産クラウドファンディングのデメリットについて解説いたしましたが、インターネット上で契約が完結し、少額から手間なく優良な不動産に投資ができる不動産クラウドファンディングには、その通り、メリットも多数あります。現物の不動産投資と違い、大きな資金を投じないためリスクが限定され、安定的に運用できる点もその魅力の一つです。メリットとデメリットをよく理解し、不動産クラウドファンディングへの投資を検討してみてはいかがでしょう。