投資とは、資産を増やすことを目的に、利益を見込んで現在の資産を投じることです。現在では、株式投資や不動産投資など、個人でできる投資も多数ありますが、理解しておかなければならないのは、“投資には必ずリスクが伴う”ということです。今回は、投資に存在するリスクと、リスク管理の重要性について解説していきます。
投資に存在するリスクとは?
投資におけるリスクとは、運用によって得られる利益が予想よりも少なくなる、または損失を被る可能性を指します。
それは一般的な「危険性」の意味とは少し異なり、投資ではリターンの変動幅(損失と利益のどちらに振れるかわからない不確実性)を表しており、リスクの中身や要因は、投資の種類やマーケットの状況によっても異なります。
例えば、株式投資では、企業の業績が悪かったり市場全体が下落したりした場合、投資した銘柄の価格が下落する可能性があります。
また、債券投資の場合、発行者が経済的な困難に直面し、利息の支払いや元本の返済ができなくなれば、投資家は損失を被ります。
これらのリスクは、投資を行う前に正確に理解しておく必要があり、適切に管理をすることで、投資家は損失のリスクを最小限に抑えつつ、最大のリターンを追求することができます。
では、その代表的なリスクについて具体的に見ていきましょう。
価格変動リスク
価格変動リスクとは、市場の需給バランスや経済状況等の変化により、投資商品の価格が変動(上下)する可能性のことです。
株式や為替、暗号資産など、価格の振れ幅が大きい商品は、価格変動リスクも大きいと言えます。
価格は、市況や経済指標の変化、政策の変更など様々な要因で変動するため、投資を行う際はこれらの要因を考慮しながら、将来的な価格変動への対策を練ることが重要です。
信用リスク
信用リスクとは、投資先(有価証券の発行体)が財務上の問題を抱え、利息や元本の支払いができなくなる可能性のことで、債券や株式を発行する国や企業が、財政難や経営不振等を理由に債務不履行(デフォルト)に陥ることを指します。
信用リスクは、個別の企業や国だけでなく、国や地域全体の経済環境にも影響を受けるとされており、例えば、日本で金融危機が発生した場合、国内の多くの企業が連鎖的に破綻・倒産する可能性があります。
投資家は、このような状況から損失を被るリスクを避けるため、企業の信用状況を(第三者機関が行う信用格付け等から)詳しく調査し、判断基準の一つとすることが重要です。
為替変動リスク
為替変動リスクとは、為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動(増減)する可能性のことを指します。
為替レートは、各国の経済状況や金利、政策、地政学的な要因(テロや戦争、災害)など、様々な事象が絡み合って変動するため、その予測は難しいとされていますが、外貨建ての資産に投資を行う際には、これらの変動要因にも目を向け、リスクを考慮した運用を行うことが大切です。
また、日本国内で円安が進行し物価高が起こると、国内企業の業績やマーケット全体に影響が及ぶ可能性があるなど、外貨建て資産以外にも為替変動の影響を受けることがあります。
カントリーリスク
カントリーリスクとは、投資先の国や地域における政治、経済、社会情勢の変化により、資産価値が変動する可能性のことです。
例えば、政治的な混乱や経済危機、国家間紛争やクーデターなどの地政学的な事象が発生した場合、それが証券市場や為替市場の混乱や価値の下落による損失をもたらす可能性があり、特に新興市場や開発途上国への投資においては気を付けるべき重要な要素です。
先進国に比べ、政治的不安定性や経済的な問題が頻繁に生じる可能性のあるこれらの国や地域で投資を行う際は、格付け機関や調査会社のまとめた指標等を基に、カントリーリスクを適切に評価・管理することが重要です。
リスクマネジメントの重要性
投資には様々なリスクが存在しますが、リスクの中身を理解し、適切に管理することで、収益減少や損失発生のリスクは軽減することができ、その管理が投資の成功を左右することも少なくありません。
リスクを軽減するための基本的な戦略は、投資先(国や企業)の選定、分散投資、定期的なポートフォリオの見直しです。
まず、投資先の選定では、信用リスクやカントリーリスクを考慮に入れ、安定性や信頼性のある国や企業を選ぶことが重要です。
企業に限定して言えば、業績や財務状況、経営陣の信頼性などから信用力を総合的に評価した上で投資を行うことでリスクを減らすことができます。
投資の基本は分散投資
投資の世界には、分散投資の重要性を示す言葉に「卵を一つのカゴに盛ってはいけない」という有名な格言があります。
分散投資とは、違う特性を持つ金融商品に幅広く投資することで、リスクの低減効果を期待する投資手法ですが、分散の方法は、国や地域の分散、商品の分散など様々あります。
例えばその方法の一つに、購入するタイミングを複数回に分けて、購入価格を平均化させるという「時間」の分散がありますが、これを株式や暗号資産などの価格変動リスクの高い資産への投資で中長期的に実践することで、短期的な価格変動が相殺され、緩和されていく傾向があります。
さらに、異なる値動きをする(相関係数の低い)資産を組み合わせれば、ある資産が値下がりして損失が生じた場合でも、他の資産が値上がりしてその損失を補う可能性があるなど、分散投資はポートフォリオ全体のリスクを軽減し、安定性を高める効果が期待できる手法と言えます。
ポートフォリオの見直し
マーケットの変化に対応したり、自身にとって最適なポートフォリオを維持するためには、定期的な運用状況の見直しが必要です。
マーケットは常に変動していくため、現在の保有資産(組み合わせや比率)が最適であっても、いつのまにか想定以上のリスクを取ってしまっていたり、期待リターンが小さくなってしまっていたりと、時間の経過と共にそれは最適ではなくなる可能性があります。
また、自身の投資目標やリスク許容度も、年齢や家族構成、収入、資産額などによって変化していくため、常にその目標やスタンスに合った投資を続けていくためには、定期的なポートフォリオの見直しが不可欠と言えます。
リスクを正しく理解し、堅実に資産運用
どの投資商品にどのようなリスクがあるのかを知り、適切な管理を行えば、マイナスの影響を抑えつつリターンを追求することができますが、そのリスクを完全に排除することは不可能と言えます。
投資においてリスクとリターンは比例する関係にあり、「ローリスク・ハイリターン」の商品は存在しません。
重要なのは、リスクをきちんと理解した上で適切な対策を行うこと、また、そのリスクが現実となった場合にも、自身の生活や将来に大きな損失を与えない範囲で投資を行うことです。
今回は、投資に存在する主なリスクと、リスクマネジメントの重要性を解説してきました。投資をする上でリスクをゼロにする方法はありませんが、適切に管理をすれば、大きな損失に繋がる可能性は減らすことができます。リスクを正しく理解し、自身の許容度と照らし合わせながら投資判断や資産配分の調整を行い、堅実な資産運用をしていきましょう。