定期預金は、銀行や金融機関への預金方法の一つで、普通預金と並び広く認知されています。また、元本減少リスクが少ないことから“安全資産”の一つとも言われていますが、円安やインフレの状況下ではどうでしょうか。今回は、定期預金の基礎知識と運用上のメリット・デメリット、有効な活用方法について解説していきます。
<定期預金の基礎知識>
銀行や金融機関の預金には、大きく分けて普通預金と定期預金の2つがあります。
定期預金の利用者は、一定期間にわたって一定の金額を預け、その期間中に金利を受け取ることができますが、通常、この金利は普通預金に比べて高く設定されています。
定期預金の特徴は、資金が一定期間拘束されることと、実質的な元本保証があることです。
これは、定期預金が低リスクで安全な運用方法であることを意味します。
<普通預金より金利が高い>
定期預金の金利が高いことは、利用者にとっては収益性を高められるという点でメリットとなります。
一方で、銀行側は預金を資金として活用し、融資や他の投資を行うことで利益を得ます。
そのため、定期預金の利用者に高い金利を提供できますが、銀行自体もこの金利差から利益を上げていることになります。
定期預金のメリットは、少額でも資産を増やす機会が最小限のリスクで得られることです。
定期預金のリスクは他の投資に比べて低く、実質的に元本が保証されているため、安定性があります。
<管理コストなしの利点と注意点>
通常、定期預金は手数料が発生しないため、管理コストは低くなります。
そのため、利用者は利息収益を最大化しやすく、利益を損なわずに貯蓄を増やすことができます。
定期預金を検討する際は、預入先の銀行の安定性と信頼性を確認することが重要です。
<元本割れのリスクは極めて低い>
定期預金には、元本割れ(価値が減少し元本が毀損する)リスクがほとんどありません。
そもそも、元本を保証して資金を集めることは出資法で禁止されていますが、元本保証のない一般的な投資商品の場合、価格変動によって元本が減少するリスクがあり、投資家は日々の価格変動に注意を払う必要があります。
一方、定期預金は、銀行に預けたお金に元本保証がついて一定期間後に返却される仕組みのため、元本割れの心配はほぼありません。
銀行は利用者に元本を保証し、預金期間終了時には預金額に加えて利息を支払います。
よって、利用者は元本を失うリスクを心配せずに安全に資産を預けることができます。
元本保証があることは、リスクを避けたい投資家や、将来的に使うお金の一時的な保管場所を探している人にとっては魅力的なポイントとなります。
<定期預金のデメリットとは?>
定期預金のデメリットは、金利を受け取る代わりに預金が一定期間拘束されるため、運用効率が悪いという点です。
通常、定期預金に預けた資金は、数ヶ月から数年間取り出せません。
この期間中にお金を引き出すことはできますが、金利の減少や手数料が発生する可能性があります。
そのため、定期預金への預入期間中は、特別な支出や投資の絶好の機会を逃す場合があり、資金の柔軟性が重要な場合にはデメリットとなります。
また、預入期間中に資金を引き出す場合、銀行は金利を下げたり手数料を課すことがあるため、受け取る利息が少なくなる可能性があります。
したがって、定期預金を選択する際は、期間中に必要としない資金だけを預け入れることが重要となります。
<保証は1000万円+利息まで>
預金保険制度に加入している金融機関が万が一破綻した場合、1人あたり元本1,000万円までと破綻日までの利息が保護されます。
これを超える部分に関しては、破綻した金融機関の財務状況に応じて支払われるため、一部は支払われない可能性がありますが、預金利用者にとっては一定の安全性が確保されていることになります。
一方で、1000万円以上の預金がある場合、超過分は保護の対象外となり、損失が生じる可能性があるため、大口の資金を預ける人にとってはデメリットとなり得ます。
このリスクを軽減するためには、資産の分散を検討することが重要です。
複数の銀行に預金を分散させるか、他の投資を行うことで回避できるリスクとなります。
<インフレのリスクがある>
定期預金の金利は、通常のインフレ率よりも低い場合があります。(これは、銀行の金利が物価の上昇率を上回らないことを意味します。)
もし、インフレ率が預金金利を上回った状態が続いた場合、定期預金に預け入れた資金は、時間とともに実質的な価値が減少し、収益が減少する可能性があります。
このインフレに対するリスクを軽減するためには、他の投資を検討することが重要です。
<円安の影響は?>
通常、円安とは外国通貨に対して日本円の価値が下落することを指しますが、これは、外国為替市場において日本円の交換レートが低下し、日本円を持つことの価値が減少することでもあります。
また、円安の状況下では、海外からの輸入品(製品や原材料)の値上がりにより物価が上昇し、これが生活費に影響を与える可能性があります。
定期預金は、契約期間中は契約時の金利が固定されるため、一般的に円安などの外部要因の影響を受けにくいとされています。
しかし、円安が他の金融商品や投資に影響を与えることもあるため、定期預金を含むポートフォリオは全体(他の組み入れ資産とのバランス)で考える必要があります。
円安により物価の上昇が続いた場合、前述のように、定期預金の利率はインフレ率に追いつかず、実質的に資産が目減りする点には注意が必要です。
円安が継続している時に全ての資産を“円”で持つことは実質的な資産価値の減少に繋がることを正しく認識し、ポートフォリオを構築する必要があります。
<定期預金の有効な活用方法とは?>
定期預金は、個人や家計の状況に合わせてさまざまな有効な使い方があります。
例えば、短期の定期預金を利用すれば、お金を確実に保護しながら将来に備え、たとえ急な出費や資金計画の変更があった場合にもある程度対処することができます。
また、長期的に見た場合は、子供の教育資金や住宅ローンの返済、老後資金などの準備に向けて定期預金を利用することもできます。
安全な運用の選択肢である定期預金は、資金を着実に増やしたい場合に適しています。
今回は、定期預金の基礎知識とメリット・デメリット、有効な活用方法について解説いたしました。定期預金は安全な資産運用として活用できますが、資金拘束期間や円安時のインフレ局面では弱い部分があります。利点を上手く活かす方法として、株式投資などのアクティブな投資手法と組み合わせ、ポートフォリオの安定化に用いるのも有効な策の一つと言えるでしょう。