株式投資をしていると、「立会外分売」に関する情報を目にすることも多いと思います。個人投資家の中には、立会外分売に積極的に参加し、利益を得ている人もいます。今回は、立会外分売の概要と参加するメリット・デメリットを解説していきます。
<立会外分売とは?>
立会外分売(たちあいがいぶんばい)とは、証券取引所の取引時間外に複数の投資家に株式を売り出すことを言います。
「立会外」は通常の取引時間外、「分売」はある株主からのまとまった売り注文を小口に分けて売ることを意味し、多くの企業で行われている株取引(売却方法)の一つです。
<立会外分売を行う理由>
上場企業が立会外分売の実施を決定するには様々な理由があります。
その主な理由を解説していきます。
・株式の売りによる株価の大幅下落を防ぐ目的
証券取引所での株式の売買可能時間は、平日午前9時から11時30分、午後12時30分から15時です。(2024年度下半期から、午後15時30分まで延長予定)
特定の銘柄を売りたい大口の株主が、保有する大量の株式をこの取引時間内に市場で売ってしまうと、需給のバランスが崩れて大幅な株価下落を招きます。
取引時間外を利用することで、多くの株式を売却しても値崩れのリスクを抑えられることが、企業が立会外分売を行う理由の一つです。
・株主を増やし、流動性を高める目的
立会外分売では、一度に数万株、多い時には数百万株売り出される場合があります。
これらの株式を100株単位に分け、複数の個人投資家に売り出すことにより、株主数が増加します。
通常、大量の株式を保有するのは金融機関や個人の大株主で、大株主が多い銘柄は市場での取引量が限られ、流動性が低い場合があります。
株式の流動性が低いと、希望する価格で売買できない可能性が高まるため、売買を躊躇する投資家が出てきます。
立会外分売で売り出し、株主の数が増えることで取引が活発になり(出来高が増加し)、流動性の向上が期待できます。
また、流動性が高まることで投資家は取引しやすくなり、その企業の認知度も向上する可能性があります。
さらに、株主数や流動株式数を増やすことで、将来的に市場区分(プライム市場、スタンダード市場、グロース市場)を変更するための基準を満たす目的もあります。
<立会外分売の抽選申込みの流れ>
通常、立会外分売の実施予定は、分売実施日の1〜2週間から1日前に、東証の場合は取引終了後である15時以降に発表されます。
発表後は、証券会社のホームページなどから、実施期間、分売する株数、申込上限などを確認することができ、分売実施日の前日の終値をベースに、割引率(ディスカウント率)と分売価格が決定します。
立会外分売に参加するには、分売実施当日の8時20分頃までに取り扱いのある証券会社から申込みを行います。
その後、申込みが多い場合は抽選となりますが、8時50分頃までに抽選の結果が分かり、当選した場合は残高として口座に反映され、取引開始の9時頃から売却が可能となります。
当選から取引開始までの時間が短いため、抽選結果はモニターしておくことが大切です。
<投資家側のメリットとは?>
次に、個人投資家が立会外分売に参加するメリットを解説していきます。
・前日の終値より安く購入できる
立会外分売では、多くの場合、当該銘柄の前日終値から数%ディスカウントされた価格で購入が可能で、買値より高く売却できる可能性が高くなります。
ディスカウント率は銘柄によって異なりますが、3%〜5%の割引となる場合が多いです。
例えば、立会外分売で前日終値から3%のディスカウント率の銘柄に当選し、当日の始値(はじめね)が前日比+0.5%を付けた時に売却できれば、購入価格に対して+3.5%の利益を得られることになります。
また、当日の始値が前日比-2%を付けた時に売却した場合でも+1%の利益になります。
つまり、前日の終値より値上がりすれば利益となるのはもちろん、値下がりしている場合でもディスカウント率より低い割合であれば利益となる点は大きなメリットと言えます。
・購入手数料が無料
通常、株式を購入する場合には証券会社が定めた手数料がかかりますが、立会外分売による買付には手数料がかかりません。売却時には手数料が発生しますが、個人投資家にとって売買のコストが安いことはメリットの一つと考えることができます。
・当選確率はIPOよりも高い
立会外分売は、抽選の流れが似ていることからよくIPOと比較されますが、当選確率は立会外分売の方が高いとされています。
取り扱いのある証券会社から簡単に申込みができるため、よく分析したうえで参加し当選すれば、通常の株式投資よりも高い確率で利益が期待できます。
IPO初値売りの平均利益と比べると利益の期待値は低くなりますが、立会外分売は実施回数が多く、一度に複数枚当選する可能性もあり、投資妙味があることがメリットです。
<立会外分売のデメリットとは?>
次は、デメリットを挙げていきます。
・抽選に外れると割引価格で購入できない
立会外分売は、抽選に当選しないと価格的に優位な取引ができません。
立会外分売が決定してからの値動きが良く、流動性が高く、ディスカウント率が高い銘柄は、購入希望者が多いため当選することは難しくなります。
分売当日は株価が乱高下する場合も多く、無理に取引すると損失を被る場合もあるので注意が必要です。
・損失が生じる可能性もある
立会外分売は、基本的に価格的な優位性がある取引ですが、ディスカウント率以上の下落があった場合は損失になる可能性があることを理解しておくことが重要です。
また、当日の寄付(よりつき)までは、様々な思惑から気配が上下を繰り返す場合があり、慣れることが必要と言えます。
特に、当選結果が出る8時50分以降は寄付での売り注文が増える傾向があるため、気配は読みづらい状況となります。
当日までの市況やマーケットの雰囲気、その銘柄の個別の理由による影響を受けるため、参加は慎重に検討することが大切です。
・あまり大きなリターンは望めない
立会外分売は、IPO投資のように初値が公開価格の2倍になるような大きな利益が期待できるものではなく、どちらかと言うと、小さな利益を堅実に得られる可能性がある取引であると言えます。
手軽に参加が可能なため、複数回の利益を重ねることで資産を増やせる可能性もあります。
当日の始値で売却せず、成長が期待できる銘柄を中長期で保有することでリターンを大きくすることも可能ですが、これには先を見通すスキルが必要となります。
今回は、立会外分売についての概要とメリット・デメリットを解説してきました。ネット証券での取り扱いもあり、実施回数も多いことから、人気の取引となってきています。一見難しそうですが、何度か経験するうちに慣れ、より良い取引ができる場合もあります。条件の良いものは当選確率が低くなりますが、興味を持った銘柄があれば、実際に立会外分売に参加してみてはいかがでしょう。