最近「老後2000万円問題」や「貯蓄から投資へ」という言葉を聞くことが多くなってきています。お金を眠らせておくのではなく、投資で運用し資産を増やしていくことにあらためて注目が集まっています。
資産形成には貯蓄と投資の2つの考え方があります。
ではなぜ今、貯蓄よりも投資が必要なのか、その理由と背景を考えてみたいと思います。
社会環境の変化
年収500万円の会社員の手取り金額は、2002年は429万円、2010年は411万円、そして2019年には394万円になっています。2002年と比べると、実に約8%も手取り金額が減少しています。
手取り金額とは、給与の総支給額から所得税や住民税などの税金と、雇用保険や健康保険などの社会保険を差し引いた額です。税金や社会保険料が上がると、手取りの金額は減少します。仮に年収が変わらなければ、使えるお金や余裕資産は減ってきています。
次に銀行預金の金利は、多くの銀行で円普通預金の場合、年0.001%です。100万円を銀行に預けていた場合、年間の利息は10円、1000万円の場合でも年間100円しか増えません。
銀行に預けていただけではお金はほぼ増えないと言ってもよいと言えます。
会社員の年収自体も上がりにくくなっていることもあり、さらに税金や社会保険料は上がり、生活必需品や食品の一部や不動産価格も上がっています。このことからも、今まで通りの貯蓄中心の資産形成ではお金に関する将来の不安や心配が解決できなくなってきている背景から、投資での資産運用が必要な時代になってきていると思われます。
資産運用を始める時期
投資に興味を持ち、やってみたいけど実践できない理由として、「まだ若いから」「よくわからないから」などが挙げられます。投資による資産運用は、基本的に運用している期間が長いほうがそのメリットを受けられます。20代30代の若い世代の人が今始めれば、その期間の分だけ有利になる可能性が高くなります。運用する時間が長ければ長いほど、投資のリスクを減らすことができます。
投資は正しい知識を身につけ、実践してみることが大切だと思います。資産運用を始めることに早すぎるということはありません。
興味を持った時点で、本や信頼できるサイトなどで投資の基本を学び、小額からでも実際に投資してみることでお金への意識も高まり、投資結果の検証ができます。自分のお金がどのように増減したかを知ることで、投資のスキルと経験値が上がります。先ずはトライしてみることが重要です。
その際には、自分の投資する商品に対してしっかりと理解したうえで、納得して投資することが大切です。
投資はギャンブル?
日本では投資=怪しい、損をする、ギャンブルのようなものという価値観がある事は確かです。学校で投資について詳しく学んでいないので、このような意見になることも仕方がないことかもしれません。ニュースでも投資詐欺や投資に関するトラブルの報道も少なくありません。しかし、このような件と、正しい投資は全く別物です。投資はギャンブルではありません。
ギャンブルはほとんどの場合、運の要素が強く、利益というよりも娯楽が主な目的となります。お客はかけられた総額から、主催者が運営費や手数料などを差し引いた金額を分け合っているいわゆる「マイナスサム」です。これはある一定の金額を取り合っているため、損する人がいて初めて、得する人が出てきます。
一方、投資は投資先の会社や投資商品の運営会社が投資家から資金を集め、会社や投資先の成長や事業拡大などに使用し、その利益を投資家に還元しています。これは「プラスサム」です。投資した全員が長期的に利益を享受できる可能性があるのが投資です。
株式投資などの場合、自分の好きな商品やサービス、その企業の持つ社会的な役割を応援する目的で投資することもできます。高い成長をすると思われる技術やサービスを持つ有望な会社、社会や環境への取り組みに積極的な会社、地元企業などを支援する理由でも投資は可能です。投資したお金が国や会社の成長を支える事にもつながり、間接的に社会や経済の発展を支える社会貢献ができるという面もあります。
以上のように、投資とギャンブルはその目的とシステムが異なります。もちろん運の要素が大きい投資もあります。それは投資ではなく、投機と呼ばれており、ハイリスクハイリターンが基本です。初心者の内は、投資する内容やリスクを十分に理解し、ハイリスクな商品に手を出さないように心がけてください。
投資に必要な資金額は?
投資に興味を持ち、その必要性は理解したものの、「投資する資金がない」という理由で実践できない人も多いと思います。投資に必要な資金は確かに多いほうが、その利益を得る金額も大きくなりますが、今は100万円や1000万円などまとまった資金がなくても、1万円からでも始められる投資はたくさんあります。
また最近は貯めたポイントや電子マネーで小口の株式や投資信託に投資ができるサイトもあり、そこから始めてみるのも一つの方法です。実際に自分の資金を投資していることで、経済ニュースや世の中の流れに対して興味を持てるようになり、経済や世界情勢の勉強にもつながる面もあります。
インカムゲインとキャピタルゲイン
投資について興味を持ち調べていくと、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」という言葉が出てきます。投資用語は横文字も多く、難しい単語もあります。しかし投資の仕組みを理解する上で、インカムゲインとキャピタルゲインの特徴は知っておく必要があります。投資全般に使用される用語で知っておくと便利です。
インカムゲインとは、資産や投資商品を保有していることで得られる利益の事です。身近な例では銀行や郵便局への預貯金で利息が付くことです。資産を手放さなければ、長期的に利益を得られることをインカムゲインと言います。
例えば、資産が株式であれば配当金、投資信託であれば分配金、不動産を持っていれば賃料のことを指します。これらは世の中の経済状況で変動はしますが、保有を続けることで得られる権利が継続します。つまり長期間持ち続ければ、その期間の分だけ利益を得られるチャンスがあります。高配当株への投資や不動産投資はインカムゲインを目的とした中長期の投資で、比較的リスクは低く抑えることができます。時間を味方につけ、お金に働いてもらうという考え方にもつながり、お勧めの投資法の一つです。
一方、キャピタルゲインは投資した商品が値上がりし、それを売却したことによる売買益のことを言います。株式であれば株の売買による値上がり益、投資信託と不動産も所有する商品や物件の売却で得た利益のことで、資産を売却することで得られた利益を指します。
つまり安く買って高く売ることでその差額を得る投資です。場合によっては短期売買での利益追求になりますので、リスクは高くなる場合もあります。
株や不動産の場合、長く持つことで得られる配当金や賃料のインカムゲインと、それを売却することで得られるキャピタルゲインの両方を得られるチャンスもあります。投資する段階で、インカムゲイン狙いなのか、キャピタルゲイン狙いなのか、またその両方なのか、明確な投資戦略を持つことが重要です。
インカムゲイン狙いであれば、目先の価格を極端に気にする必要はありません。
投資は長期的なビジョンを持つことでリスクを軽減できるという考え方もあります。
初心者の方は極力リスクを抑えた投資を実践することをお勧めします。
投資の目的とは?
最後に、投資とは資産を増やすことが大きな目的ですが、それだけでなく、国や企業の経済活動に参加し、それを支援することで社会貢献にもつながる面もあります。
投資をすることで、政治や経済に対して自然に興味を持ち勉強にもなります。
投資を正しく理解し実践することは、人生をより豊かにし、より楽しくするものだと私は思います。この機会に投資の世界への扉を開いてみてはいかがでしょう?