株式や為替取引、暗号資産など個人投資家のネットでの取引が活発化していますが、不動産クラウドファンディング・ソーシャルレンディングはこれらの投資商品のように、日々の急激な価格変動がなく、投資後は特に管理がいりません。
自分のペースで小額から投資ができるため、注目を集めています。
今回は不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングの違いと、それぞれの特徴やメリットをご紹介いたします。
- <ソーシャルレンディングとは?>
- <ソーシャルレンディングの問題点>
- <ソーシャルレンディングの事故原因>
- <ソーシャルレンディングの可能性>
- <不動産クラウドファンディングとは?>
- <不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングの担保の違いについて>
- <不動産クラウドファンディングのメリットとは?>
<ソーシャルレンディングとは?>
ソーシャルレンディング(以下、SL)は、融資・貸付型クラウドファンディングとも呼ばれ、SL事業者が第二種金融商品取引業の登録を受けることにより、インターネット上で投資案件を募集する仕組みです。
特徴として事業者は貸金業法の貸金業者であり、投資家から集めた資金をSPC(特別目的会社)などに貸し付けるスキームです。
資金を貸し付けるにあたって担保を設定することがほとんどですが、再生エネルギー(太陽光発電、バイオマス発電など)案件は、担保設定金額の算出が困難な場合もあります。
その分、利回りは高いファンドも多く、中には6%~10%と高利回りの案件もあります。
投資家には貸付会社からSL事業者に支払われた金利から、事業者の手数料を差し引いた金額が分配金として配当されます。
当然ですが利回りが高い分、投資家が負うリスクも高くなります。
<ソーシャルレンディングの問題点>
ソーシャルレンディングは過去に貸付先の資金流出や不祥事、事業者の善管注意義務違反など、件数として少なくない事故が起こっています。
なかにはポンジスキーム(※1)と疑われても仕方がないような、ずさんなスキームの案件もありました。
(※1:ポンジスキームとは、配当金などを支払う名目で資金を集めるが、実際は運用実態がなく、新しい出資者からの出資金を配当金として支払いながら、破綻することを前提の詐欺的手法です。日本では「自転車操業」とも言われています。)
多くの資金を集め、人気化していたSL事業者でもこのような事故が起こり、投資家はソーシャルレンディングそのものに対して疑心暗鬼になってしまう状況もありました。
単に投資の失敗によるデフォルト(貸し倒れ)であれば、その責任を投資家は負うべきですが、事故や不祥事によるデフォルトとなれば、それはそもそも投資の範疇ではないと言いう意見もあります。
<ソーシャルレンディングの事故原因>
ではなぜこのような事故が起こったのかというと、ソーシャルレンディングのスキーム自体の問題が大きいと言えます。
事業者が投資家から集めた資金を貸し付ける先が、匿名性を認められているので、投資家からは詳細がわからない場合もあります。
つまり貸付先の会社が何らかの悪意を持っていた場合、SLの仕組みを利用して資金を本来の使途と別の目的に使用することが可能になります。
これを防ぐために、SL事業者は貸付先に対して管理義務がありますが、これがなされていなかったケースもあり、ニュースでも報道される大きな事件に発展したこともありました。
<ソーシャルレンディングの可能性>
一部でこのような事故はありましたが、ソーシャルレンディングの全てが悪いわけではありません。
安定した運営を続ける信頼できる事業者もありますし、高利回りでありながら、正常運用されモニタリングもしっかりとされている魅力的なファンドも数多くあります。
ソーシャルレンディングはまだ黎明期にあり、このような事故を受けて、より透明性の高い、安心して投資できる投資商品になることが期待されます。
SLは高利回りのファンドもあり、償還され投資が成功すれば多くの利益を得ることができるメリットがあります。
しかし投資する際は、利回りだけに惑わされず、事業者やファンドをしっかりと分析することが必要です。
<不動産クラウドファンディングとは?>
不動産クラウドファンディングとは、事業者がインターネット上で投資家から募集した資金で不動産の取得や運営を行い、そこから得られた利益を投資家に分配する仕組みです。
この利益の内容はファンドによって異なり、家賃収入から費用や手数料を差し引いた収益(インカムゲイン)の場合と不動産を売却することに得られた利益(キャピタルゲイン)の場合があります。
ソーシャルレンディングとの違いは、ファンドで運用される不動産の詳細が開示されるため、透明性が高い点が挙げられます。
また投資家から集めた資金をソーシャルレンディングでは貸付にあてられますが、不動産投資クラウドファンディングでは不動産の購入や運用に充てられる点で異なります。
また事業者が不動産を取得、運営するため、運用期間中の不動産の管理や運営は事業者が直接行うことで、スキームが分かり易く安全性と透明性も高くなります。
このサービスは「不特法型クラウドファンディング」と呼ばれています。(不特法とは不動産特定共同事業法の略語です)
<不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングの担保の違いについて>
一般的なソーシャルレンディングでは、貸付先の返済が滞った場合、資金回収のため担保権を実行する手続きをして、売却などから得られた資金を投資家に分配します。
このため債権回収に時間がかかり、担保価値によっては元本が大きく棄損する場合があります。
再生エネルギー関連ファンドの一部では担保価値の算出が難しい案件もあり、リスクが高くなり注意が必要です。
一方、不動産クラウドファンディングの場合は、事業者が投資先物件に近い存在のため、何か問題が生じた際も事業者の管理の下で素早く対応が可能です。
担保に関しても物件ごとに細かい情報が開示されている場合が多く、ソーシャルレンディングに比べ透明性が高いことが特徴です。
投資家にとって担保の情報や価値が十分開示されていることで、投資判断がしやすくなるメリットがあります。
<不動産クラウドファンディングのメリットとは?>
事業者によってはファンド運用終了時に損失が発生した場合でも、事業者が優先的にその損失の一定割合を負担する「優先出資/劣後出資」を行っており、投資家の損失を軽減する仕組みが用意されています。
また不動産賃貸のファンドでは、運用物件の空室リスクに対する対策として「マスターリース契約」をおこなっているファンドもあります。
これによって賃料収入が保証され、賃料収入が想定よりも低かった場合でも、投資家の損失は抑えられる仕組みです。
不動産クラウドファンディングは出資金の元本は保証されておりません。
出資金元本保証は法律により禁じられていますが、これらの優先出資/劣後出資の仕組み、マスターリース契約により出資金元本減少リスクを少なくしていることは、投資家にとって大きなメリットと言えます。
ここまで不動産クラウドファンディングとソーシャルレンディングの特徴とメリットを解説してきました。
今後はますますソーシャルレンディングから不動産クラウドファンディングへの資金の流れが加速する可能性が高いと考えます。
インターネットを通じて気軽に小額から始めることができ、価格変動リスクが無いため、日々の価格変動に翻弄されることがありません。
投資後も特に管理が必要ありませんので、毎日マーケットの値動きを確認する時間のない忙しい人にも向いている投資商品です。
不動産クラウドファンディングは、投資初心者はもちろん、資産を増やす段階の人から資産を守る段階の人まで、幅広くお勧めできる魅力的な投資商品のひとつです。
ファンドの内容、リスクとリターンはそれぞれ異なりますので、投資前に十分に商品特性を理解し、自分のリスク許容度に合ったファンドに投資することが重要です。
この機会にご自身のポートフォリオに不動産クラウドファンディングを加えてみてはいかがでしょう?