近年、若年層を中心にビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)へ投資する人が増加しています。これらのデジタル通貨はブロックチェーンを基盤にしており、取引の透明性とセキュリティ性に優れています。今回は、暗号資産の基礎知識と投資の際の注意点を解説していきます。
<暗号資産とは?>
ビットコインなどの暗号資産は、もともと「仮想通貨」と呼ぶのが一般的でしたが、2022年5月の資金決済法の改正により、法令上、「暗号資産」へ呼称変更されました。
暗号資産はデジタル形式の通貨で、基本的に政府や中央銀行の信用に依存せず、分散型の台帳であるブロックチェーンを使用して取引を記録します。
これにより取引は透明化され、不正のリスクが低くなり、安心して取引できる環境になっています。
また、世界の一部の実店舗やネットショップでは、買い物やサービスの決済手段として利用できるところもあり、徐々に普及が進んでいます。
暗号資産は、基本的に国家やその中央銀行によって発行された法定通貨ではありませんが、2021年に中南米のエルサルバドルが、世界で初めて暗号資産のビットコイン(BTC)を自国の法定通貨とし、大きな話題となりました。
また、翌2022年には、中央アフリカ共和国もビットコインを法定通貨に採用し、世界で2例目のビットコインが法定通貨の国となりました。
<ブロックチェーン技術の活用>
ブロックチェーン技術は、暗号資産の基盤として不可欠な技術です。
これは分散型台帳で、中央管理者が存在しない分散されたネットワーク上ですべての取引が保存される仕組みで、耐攻撃性に優れ、不正取引や改ざんが困難なため、取引の透明性とセキュリティが常に担保されます。
この技術がなければ、ビットコインをはじめとする暗号資産の誕生はなかったと言われています。
<暗号資産の種類>
暗号資産は世界中に2,500種類以上存在すると言われていますが、以下では代表的なものを紹介いたします。
・ビットコイン(BTC)
ビットコインは、2008年にサトシ・ナカモトという人物がネット上で公開した論文に賛同した複数の開発者が、サトシ・ナカモトに協力し、2009年に創造した最初の暗号資産です。
ビットコインはデジタルゴールドとも称され、世界中で広く受け入れられ、取引量が多く市場価値が最も高い暗号資産です。
・イーサリアム(ETH)
イーサリアムは、ブロックチェーンにスマートコントラクトという機能を組み込んだ分散管理型のプラットフォーム、及びその環境下で使われる暗号通貨の総称です。(本来、通貨自体は「イーサ(英:Ether、単位:ETH)」といいますが、日本ではプラットフォームと通貨をどちらも「イーサリアム」とする表現が普及しています。)
イーサリアムは、新たなプロジェクトやアプリケーションの開発において高い需要があり、NFT (Non-Fungible Token)の取引にも用いられています。
・その他の主要な暗号資産
他にも、リップル(XRP)、リスク(LSK)、ネム(XEM)、ライトコイン(LTC)、ビットコインキャッシュ(BCH)など、数多くの暗号資産が存在します。
それぞれの暗号資産は異なる技術と用途を持ち、マーケットでの値動きも違ってくるため、投資家はそれぞれを比較し、特徴を理解したうえで取引する必要があります。
<暗号資産へ投資するメリット>
・分散化とセキュリティ
暗号資産は、政府や中央銀行に依存せず、ブロックチェーン技術を使った中央管理者の存在しないネットワーク上で運用されます。
データは暗号化され、偽造や改ざんが難しいため、極めて安全性が高いとされています。
また、暗号資産は24時間365日、世界中の投資家と取引が可能で、国や時差による時間的制約を受けません。
市場の営業時間や休場に左右されず、いつでもリアルタイムに取引でき、リスクヘッジとして活用することも可能です。
・高いリターンの可能性
暗号資産はボラティリティ(価格変動性)が高い一方で、大きなリターンが期待できるとされています。
過去の価格推移を見ると、2019年12月時点で1ビットコインは約80万円でしたが、2021年3月末には約650万円と大きく上昇しています。
変動幅が大きいということは、上手く取引すれば短期間に大きな利益を狙える、と言い換えることができ、この点に魅力を感じて取引する人も多い印象です。
<投資する際の注意点>
変動率が高く大きなリターンが期待できる反面、大きな損失に繋がる可能性もあることには注意が必要です。
暗号資産に投資する際の主な注意点は以下の通りです。
・リスク管理を徹底する
暗号資産は非常にボラティリティが高く、価格が急激に変動することがあります。
投資を行う際は予めリスクを慎重に評価し、急激な価格変動にも対処できるよう投資計画や取引ルールを立てておくことが重要です。
・自分に適した取引所を選定する
取引所は暗号資産の売買を行うプラットフォームであり、投資において重要な役割を果たします。
取引所選びの際は、信頼性、取り扱い通貨の種類、機能性、手数料、安全性(セキュリティ対策)などの観点から、自身の取引スタイルに合った取引所を慎重に選ぶ必要があります。
・投資計画に沿って投資を行う
投資家は、自身の投資目標とリスク許容度に基づいて、適切な投資計画を立てる必要があります。
投資計画には、購入する暗号資産の選定、投入資金額、投資期間、値動きの想定などがあり、これらを事前にシミュレーションすることで、想定と違う値動きになった場合でも冷静に対応することができます。
投資の計画やマイルールを設定せずなんとなく取引した場合、思わぬ大きな損失を被る可能性があります。
・短期売買の繰り返しはハイリスク
暗号資産の短期間の値動きを狙った取引は、価格の急激な変動に対応できるスキルと高い情報収集力、感情に左右されない冷静さなどが求められ、初心者には難しく、高いリスクを伴います。
将来の成長を見越して暗号資産を一定期間保有する戦略を取ることで、市場の短期的な価格変動に左右されず、長期的な収益を狙うことができます。
・暗号資産内で分散投資する
リスクを分散させるために、複数の暗号資産に投資することも有効な策と言えます。
特定の暗号資産に一括集中投資せず、できるだけ性質や値動きの異なる複数の暗号資産に少額ずつ投資することで、リスクを抑え、ポートフォリオ全体の安定性を高めることができます。
・信頼できる情報源を見つける
昨今は、SNSや個人ブログなどでも、仮想通貨のトレード方法について多くの情報が発信されています。
それらの中には有益な情報もありますが、買い煽りや売り煽りと言われるポジショントークが含まれる場合も多くあります。
他人の意見や投資戦略に頼った取引は、時に大きなリスクを伴うため注意が必要です。
また、高利回りを謳った詐欺的な案件も中には存在するため、信頼できるメディアからの情報だけを活用することが大切です。
<暗号資産の将来性>
暗号資産は、物やサービスの決済手段としての利用など、徐々に普及が進んでいますが、現在私たちが使用する日本円や世界の基軸通貨である米ドルのように、国家が価値を保証したり、法的な裏付け(確実性)があるものではありません。
一方で、暗号資産市場は今後も成長が期待され、保有者が増えることでその信頼性も高まる可能性があります。
今回は、暗号資産の基礎知識と、投資の際の注意点について解説してきました。暗号資産は休日や夜間も取引できるため、取引時間に制限のある株式投資などとの分散投資先として検討することもできます。一方で、先進国でこれを法定通貨としている国はなく、市場での変動率も高いことから、損失のリスクが高く、取引には注意が必要です。暗号資産へ投資する際には、これらの特徴を理解し、少額から中長期目線で投資することをお勧めいたします。