信託報酬は投資信託をするときには気にかけておく必要があります。投資信託の利益の大きさに直結する重要な指標として知られているのが信託報酬です。この記事ではその内容や計算方法、支払い方法などについて概説します。
信託報酬は投資信託をするときには気にかけておく必要があります。投資信託の利益の大きさに直結する重要な指標として知られているのが信託報酬です。この記事ではその内容や計算方法、支払い方法などについて概説します。
信託報酬とは
信託報酬とは投資信託を利用するときにかかる管理及び運用のための手数料です。投資信託を購入して保有している間はずっと支払い続けなければならない手数料で、保有している投資信託の種類や金額によって決まる仕組みになっています。
保有している投資信託の資産額に対して年間何パーセントといった形で決まっているのが通例です。
投資信託は一つの投資対象に対して自分自身で投資をするわけではありません。証券会社、信託銀行、運用会社が協力し、多数の投資家から集めた資金を複数の投資先に分割して運用することで利益を得る仕組みになっています。
投資家は出資者の一人としての位置付けになっていて、運用会社による売買の運用や、信託銀行による資金の管理などにかかるコストを支払うことが求められています。全体でかかるコストを総資産額に比例する形で分割して負担する仕組みになっています。
この費用のことを信託報酬と言い、どの投資信託でも多かれ少なかれ負担しなければなりません。
信託報酬が何パーセントかは個々に決まっているため、選んだ投資信託によって負担が異なります。大きな信託報酬がかかる投資信託を選んだ場合には利幅が大きくないと損失を生む可能性もあるので注意が必要です。
しかし、その分だけ運用会社が活発に取引をして利益を生もうとしていることも多いので、安易に信託報酬が安ければ良いというわけではありません。
信託報酬の計算方法
信託報酬の計算は日割りで行うことになっています。投資信託ごとに信託報酬が何パーセントになるかが記載されていますが、このパーセンテージは年利に換算したものです。実際にはその日の総保有資産に対して信託報酬の日割りの利率をかけた値を信託報酬として支払います。
例えば、保有している投資信託が100万円だったときに、信託報酬が2%と定められていたとしましょう。すると、日割りでは2%の365分の1が該当するので、54円がその日にかかる信託報酬です。このようにして毎日信託報酬を計算していき、支払いを求められることになります。
このような日割り計算をすることから、年間で信託報酬がいくらかかるかを見極めるのは簡単ではありません。100万円を投資して一年間運用したら、信託報酬が2%のときには2万円の負担があるというわけではないからです。
投資信託は基準価額が上下動を起こしているため、日々資産総額は変化します。分配金が出て基準価額が下がることもあるでしょう。このような値動きによる影響を加味して考える必要があることから、具体的に年間でいくらかかるかを見積もるのは困難です。
ただ、複数の投資信託の信託報酬の高さを比較するときには2%、3%といった指標が参考になります。概算という意味では投入資金額に信託報酬の割合をかけて計算しても良いでしょう。
信託報酬はいつ支払うのか
信託報酬は日割り計算をすることがわかると、いつ支払いをするのかが気になるでしょう。毎月一回、まとめて支払いをするのか、年間で支払いをすれば良いのか、売ったときに清算する仕組みなのかといった形で、様々な支払いの仕組みを考えられます。
実際には投資信託の信託報酬は毎日計算された後に支払う仕組みになっています。先ほど計算したように100万円の資産を持っていて、2%の信託報酬が求められている場合には54円の支払いが必要です。
この日の時点で54円が保有資産から差し引かれて、翌日に運用される資産は99万9946円になります。実際には基準価額の変動も起こるのでこの通りの資産額になるとは限りませんが、基本的には日々支払っていく仕組みになっています。
そのため、投資信託では基準価額が上がっていかないと毎日資産が目減りしていくことになります。ただ、毎日基準価額が上がることはあまりないので、長期的な視野で投資をすることが重要です。
株式や債券の相場は日々変動しているので、今日は低かったとしても明日は上がることもあります。投資信託では分散投資になっているので相場の動きが平均化されていて、日々の変動はあまり大きくないのが一般的です。
ただし、運用会社が活発に取引をすると大きな値上がりをすることもあります。それが繰り返されることで資産価値が向上するのが通例です。
信託報酬の目安
信託報酬としてこれまで2%という水準を挙げてきましたが、実際にはどのくらいが一般的なのでしょうか。信託報酬の目安は投資信託の種類によって異なります。
あくまで信託報酬は資産の運用や管理にかかるコストをまかなうための手数料という位置付けなので、運用コストが高い投資信託ほど信託報酬も上がります。
例えば、株式を中心にしている投資信託と、公社債を重視している債券ファンドの投資信託では、後者の方が信託報酬が低めです。債券ファンドの場合には0.1%から1%くらいが一般的な水準になっています。株式を中心にしている投資信託の場合にはかなり幅が広く、0.2%から3%くらいのものが主流です。
株式を中心にしている投資信託は大別するとアクティブファンドとインデックスファンドがあります。アクティブファンドでは運用会社が活発に売買を行い、資産配分を検討してインデックスよりも大きな利益を生み出せるようにしているのが特徴です。
そのため、信託報酬の水準も高く、1%から3%くらいが一般的になっています。それに対して、インデックスファンドの方が運用コストを抑えられることから、信託報酬も0.2%から1%くらいが普通です。
また、ETFも比較的低い水準になっていて、0.2%から1%が標準的になっています。このように運用コストを考慮するとおよその目安を見極めることが可能です。
信託報酬を押さえておく重要性
投資信託で資産運用をするときには信託報酬を押さえておくことが大切です。ETFなどの一部の投資信託を除くと、一般的には中長期投資によって利益を得ることを目指すのが投資信託の特徴です。
そのトータルリターンがいくらか、年利回りはいくらかを考える上では信託報酬の影響を無視できません。投資信託の分配金利回りは5%くらいのものがよくあります。このような投資信託で信託報酬が2%あったとしたら、概算では利回りは3%くらいになるとわかります。
もし同じ分配金利回りの投資信託を0.2%の信託報酬で運用できたら、4.8%の利回りになるので利益におよそ1.8%の違いが生じるでしょう。100万円の運用なら年間で1万8千円もの差になります。
また、信託報酬が高いほど運用にコストをかけていると考えることもできます。投資信託で運用をしているのは人なので、優秀な人に運用を任せていたり、複数の人で運用をしていたりすると想定できるでしょう。
その方が想定していた利回りを達成できる可能性が高いと考えられるため、信頼性が高いと期待できます。必ずしも目論見通りになるとは限りませんが、想定利回りが高い場合には信託報酬が高いのも仕方がないと考えて候補にしてみましょう。
内容を吟味して魅力があるなら、高い信託報酬を払ったとしても十分な利益を得られる可能性があります。
信託報酬を確認してから投資信託を始めよう
信託報酬は投資信託を運用している間はずっと支払わなければならない手数料です。運用や管理にかかるコストに基づいて決まっているのが特徴で、アクティブファンドの場合には高くなります。利回りを考えるときには信託報酬を加味して、利益を上げやすいものを選びましょう。