直接投資とは?間接投資との違いやメリット・デメリットをご紹介

直接投資

投資にはさまざまな種類のものがありますが、その中には一般の投資家には、あまりなじみのないものもあります。直接投資もそのような投資の一つですが、ここでは、直接投資の概要やメリット・デメリットについて、詳しく紹介します。

 

 

直接投資とはどのようなものか?

 

直接投資とは、特定の地域において、工場を建設したり、株式を取得することを目的としておこなわれる投資のことです。株式を取得する目的はその会社の経営に参加することにあり、一般企業が自社の経営規模を拡大するために、おこなわれることが多い投資です。

 

直接投資は、投資をおこなう場所によって種類が分かれていて、国内でおこなう直接投資のことを対内直接投資と呼んでいます。対内直接投資の意味は法律にも規定されていて、外国為替及び外国貿易法の第26条第2項には、どのようなものが対内直接投資に該当するか、具体的な条件が列記されています。

 

対内直接投資は日本の企業が日本の企業に直接おこなうものもあれば、国外の企業が日本の企業に投資をおこなうものもあります。

 

直接投資のもう1つの形態が対外直接投資で、これは海外の企業などに直接投資をおこなう方法です。海外に進出を希望する企業がおこなうことが多い投資で、現地企業の株式を取得することにより、経営に参加し、その企業を海外進出の拠点とする目的があります。

 

対外直接投資は日本の企業も広くおこなっていますが、多くの企業が対外直接投資をするようになったのは、1980年代後半からです。この時期に日本の企業が対外直接投資をおこなった主な地域は東南アジアで、国外における製品の製造拠点を作る目的で対外直接投資をした日本企業も多く存在しました。

 

直接投資と間接投資の違い

 

直接投資と反対の意味を持っている投資が、間接投資です。直接投資が経営参加を目的とすることとは対照的に、間接投資は経営への関与を一切目的としていないところに大きな特徴があります。

 

直接投資も間接投資も、株式を購入することが具体的な投資方法の一つであるところは共通していますが、間接投資では株式の配当を獲得することが、主たる目的になっています。そのために、必ずしも大量の株式を購入する必要はなく、利益を獲得しやすい程度におさえて株式が購入されることも一般的です。

 

間接投資という言葉が使われる場合、外国企業の株式を購入することを意味することが多くなっていて、国内の株式を購入するよりも資産運用としては効率的であることから、広くおこなわれています。

 

その一方で直接投資は、間接投資と同様に株式を購入して投資をする場合でも、その企業の経営に参加できる程度まで、大量の株式を購入するのが大きな特徴です。株式を購入してその企業の経営に参加するためには、発行済の普通株式の総数かもしくは議決権の10パーセント以上の株式を取得する必要があります。

 

こうした大量の株式を購入するためには多額の資金が必要になります。そのために、小規模な資産で投資運用をしている個人投資家にはおこなうことが難しい方法ですが、非常に多額の資金を持っている個人投資家ならば、経営参加する目的で大量の株式を購入することも可能です。

 

直接投資のメリット

 

企業が直接投資をおこなうことには、数多くのメリットがあります。その一つが、海外での事業活動を始めやすくなることです。これまでに海外で事業をおこなったことがない企業の場合、全くゼロの状態から国外で事業を始めることは多くのデメリットがあります。

 

進出先の国に関する知識がない場合には、日本の法律との違いに戸惑うことも多く、実際に経営を開始するまでに、長い時間がかかってしまうことも珍しくありません。しかし、直接投資をおこなうことでこうしたデメリットを全て解決できます。

 

進出を希望する国ですでに経営をおこなっている企業の株式を多数取得することにより、その企業の経営に参加することが可能になり、全ての株式を取得すれば、その企業を国外の子会社にすることもできます。

 

国内でおこなっている事業と似たような事業をおこなっている企業に直接投資をすることで、その企業の物的資源や人的資源を、自社の海外進出のために活用できることも、企業にとっては大きなメリットです。

 

直接投資によって国外の企業を子会社にすれば、現地で従業員を新たに採用したり、オフィスを作る必要もなくなるので、短期間のうちに海外進出を望む企業にとってもメリットの多い方法です。国外の企業は現地でのビジネスに精通していることも多いので、蓄積された経験を効果的に活用できることも、直接投資のメリットです。

 

直接投資のデメリット

 

直接投資には数多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあります。その中でも指摘されることが多いのが、国内の産業が空洞化してしまう可能性があるということです。

 

製品を製造して販売している企業の場合、できるだけコストをかけずに製造することが、より多くの利益を獲得するためには欠かせないことですが、そのために役立つのが直接投資です。

 

日本よりも安い労働力を利用できる国に工場を建設すれば、製品の製造コストを大幅に下げられることも多いので、多くの企業が直接投資をおこなっています。貿易摩擦が起こっている国などに対しても直接投資がおこなわれることがありますが、国外に工場を作ることで現地での雇用を増やすことができるため、対日感情の悪化を抑制する効果もあります。

 

しかし、直接投資により国外に多くの工場を建設することで、日本国内における雇用が大きく減少してしまうことが、よく問題視されています。

 

実際に日本の企業においても、労働力の安い海外に工場を建設した後で、国内で運営していた工場の一部を整理することはよくおこなわれていて、そこで働いていた人の雇用が打ち切られるようなケースもあります。国外に日本の技術が流出しやすくなることも対外直接投資のデメリットとされていますが、メリットもそれ以上に多いために、非常に解決するのが難しい問題です。

 

直接投資の具体的な例

 

直接投資の具体的な例としてあげられるのが、日本の一般企業が国外でおこなっている各種の直接投資です。特定の国外企業の経営権を完全に獲得するために過半数以上の株式が取得される場合も多く、買収された国外企業は、支店や子会社として存続するのが一般的です。

 

経営権を獲得した企業を通して工場を建設する方法も直接投資ではよくおこなわれていて、一から現地に法人を設立して工場を設立するよりも、有利な面が多いです。国外直接投資の具体例としては、すでに現地に存在している工場を取得することを目的として、おこなわれるものもあげられます。

 

国外に工場を建設するためには多額の資金を必要とすることも多いですが、工場を所有している企業ごと経営権を取得することにより、企業と工場の両方を一度に獲得できるのがメリットです。

 

国外直接投資がおこなわれた場合には、買収された企業に雇用されていた従業員が、そのまま新しい親会社の社員として働く例も珍しくありません。直接投資をした企業にとっても、海外で事業をおこなうにあたって能力の高い人材は不可欠であることから、人材を確保する目的で直接投資がおこなわれる例もあります。

 

直接投資を国外でおこなうことが多いのはアメリカの企業ですが、イギリスや日本などの企業も直接投資をすることが比較的多いです。投資の相手先となっている具体的な例としてあげられるのは、中国やブラジルなどの、高い経済成長が見込まれている地域の企業です。

 

企業経営にも有利な直接投資

 

直接投資について詳しく紹介してきましたが、多額の資金を必要とするために、一般の投資家には非常に難しい投資の方法です。しかし、多額の資金を持っている投資家ならば不可能ではないため、企業経営に興味のある投資家は、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。