国民年金や厚生年金の管理・運用をおこなう機関GPIFは、国民にとって重要な働きをしている存在です。国内外の債券や株式を運用する資産は、150兆円を超える莫大な金額。世界的にも運用資産額の上位を誇るGPIFについて、紹介します。
国民年金や厚生年金の管理・運用をおこなう機関GPIFは、国民にとって重要な働きをしている存在です。国内外の債券や株式を運用する資産は、150兆円を超える莫大な金額。世界的にも運用資産額の上位を誇るGPIFについて、紹介します。
- GPIFとは
- GPIFとは投資初心者にとって模範例
- GPIFとは資産運用をしている機関?
- 投資初心者が知っておきたいGPIFの分散投資とは
- GPIFとは責任を持って年金を預かっている機関
- 投資初心者はGPIFの動きに注目しておこう
GPIFとは
GPIFとは、年金積立金管理運用独立法人の英語表記を略した名称です。厚生労働省が管轄する独立行政法人で、厚生年金と国民年金を管理・運用しています。
設立は、2006年4月1日。もともと公的年金の運用は年金福祉事業団が任せられていましたが、2001年3月に政府の改革によって事業団を廃止し年金資金運用基金へと改組させ、さらに2006年に年金積立金管理運用独立行政法人が設立された経緯があります。
GPIFの運用資産額は、2020年9月末時点で172兆円超です。これほど巨額の資産運用をおこなっている年金基金は、世界でも最大級。国際的にトップランクの機関投資家でもあるGPIFですが、そもそもGPIFが運用しているお金は国民がコツコツと積み立ててきた年金です。
GPIFが報告している資産運用状況は、意識しておいたほうがよいでしょう。というのも、資産運用にはリスクが伴い、上手くいくとばかりとは限らないからです。
実際、海外では年金基金の運用で大きな損失を出している国もあります。今後の年金財政に欠かせない積立金を資産運用で減らすことなくプラスに導いてくれるように、GPIFには責任をもって年金基金の管理運用をおこなってほしいものです。
個人の投資家にとっても、GPIFの資産運用法が参考になることがあります。安全な運用が求められる機関だけに、長期運用での配分比率などはチェックしどころです。
GPIFとは投資初心者にとって模範例
GPIFとは、投資初心者にとっても模範例となる機関投資家です。世界では、過去何度も経済的な危機に面しています。そのたびに危機を回避してきたGPIFは、優秀な投資家といってよいでしょう。
たとえばリーマンショック後にも、GPIFの運用実績はプラス3%弱を記録。2020年には新型コロナウイルス感染防止のために経済活動が大きく制限されましたが、やはりGPIFの運用実績はプラスを記録しています。
このような好成績を上げることができたのは、GPIFの資産運用方法に見習うべき点があったからでしょう。長期的に安全な資産運用をしたい投資初心者にとって、GPIFは良い先生のようなものです。
しかし、GPIFは資産運用に成功してばかりいるわけではありません。2019年度第4四半期には、過去最大の下げ幅を記録しています。その後2020年度第1四半期に最大の上げ幅を記録したと報告されても、プラスマイナスゼロになっただけではないかという見方もされています。
国民から批判されても当然のような運用実績を作ってしまったGPIFですが、そのようなマイナスに見える面も投資初心者には格好の見本です。損失を出すまでにGPIFは収益を上げており、長い目で見れば資産運用はプラスの結果を残しています。
つまり運用結果に一喜一憂せず、冷静な判断で運用を続けることで長期運用に成功しているわけです。投資を始めたばかりの初心者にとって、これほどわかりやすい見本はなかなか見つからないでしょう。
GPIFとは資産運用をしている機関?
GPIFは国民の年金を管理運用している機関ですが、実際に基金を運用しているのは誰なのかも気になるところではないでしょうか。実は、年金資産は全てがGPIFによって運用されているわけではありません。
一部は自家運用していますが、運用受託機関に運用を託している資産もあります。運用受託機関とは、信託銀行や投資顧問会社などです。どこの機関が運用を受託されているかも、一部は公表されています。国内外複数の企業に運用が委託され、委託先が募集されることもあります。ただし、外国株の運用受託先は非公表です。
受託機関が運用している方法は、多くがインデックスファンド運用だといいます。インデックスファンド運用は目安となる指数に連動する運用方法で、安全性の高さや運用コストの低さがメリットです。
一方で大きな収益には期待しにくい面があるものの、より安全に投資をしたい人には魅力的な運用方法といえるでしょう。目安とする指数は、たとえば国内株なら日経平均株価やTOPIX(東証株価指数)となります。
目安とする指数が下がってしまった場合はインデックスファンドも連動して下がってしまいますが、高度なスキルや手間が不要な分だけ運用しやすい方法です。
GPIFの一部は、アクティブファンドで運用されているといいます。目安となる指数を設定し、それ以上の運用成績を目指すアクティブファンドは、運用担当の実力が問われる比較的リスキーな方法です。
投資初心者が知っておきたいGPIFの分散投資とは
投資初心者がGPIFの資産運用から学べることは、分散投資の重要性にもあります。GPIFでは、資産クラス1位になる株式や債券が何かを当て続けることが難しいと説いています。投資には当たりはずれがあり、1つだけの株式や債券に投資するより複数のターゲットに分散投資したほうが大きな損失を避けることができるという考えです。
債券には債券の、株式には株式の特性があります。それぞれの特性を理解して運用することも、リスク回避するために重要なポイントです。
GPIFの資産構成は、ほぼ5分割されています。たとえば2019年度末は、国内債券・国内株式・外国債券・外国株式がそれぞれ23%前後の割合です。残りの数%を短期資産が占めており、長期的な観点で資産構成の割合を策定する姿勢は毎期受け継がれています。
それでも、運用成果が思わしくないときもあります。
ただし、運用成果の悪さは投資期間を伸ばすことによって相殺可能です。分散投資に加えて長期運用をすることが、リスクを抑えるコツというのもGPIFから学べることです。
投資のリスクといっても、資産運用ではリスクをイコール損失と捉えているわけではありません。投資のリスクとは、収益であるリターンの変動と考えられています。変動が大きければ損失が出やすくなり、リスクが高いことを意味しています。
GPIFがリスクとリターンを巧みに計算しながら資産運用していることも、投資初心者におすすめの心得です。
GPIFとは責任を持って年金を預かっている機関
GPIFは、年金の運用をおこないながら年金という財源を守っている機関です。その責任の重要性はしっかり認識している機関であり、だからこそ長期運用や分散投資の重要性を説き実行しています。
同時に、年金積立金の役割についても正しく理解されるよう努めています。年金積立金とは、年金を受け取る世代に給付した後残った年金保険料です。誤解されやすいのは、GPIFが運用している資産が現役世代や将来年金を受け取る予定の人の分のお金ではないかということ。
正しくは、国民から集められた年金保険料のうち、年金給付に充てられなかった分が積み立てられて資産運用されているわけです。その収益は、未来の世代の年金給付としてまかなわれることが計画されています。
年金保険料を支払う世代が減少しつつある世の中で、将来的に年金が給付されないのではないかという心配もあるでしょう。
しかし、年金財政のバランスをとることは100年計画で考えられています。資産運用にまわされる年金積立金によって、年金財政を安定させることも計画のうちです。
それでも積立金からまかなわれる給付金は、将来世代が受け取る分のわずか1割だと見られています。長年支払った年金を資産運用で減らされ、少子高齢化で将来の年金給付が減ってしまうという心配はあまりないようです。
むしろGPIFが運用管理する年金積立金によって不足分を補う仕組みになっている点に、注目しておきましょう。
投資初心者はGPIFの動きに注目しておこう
GPIFの資産運用方法や運用実績には、初心者に限らず投資をする多くの人が参考にできる点があります。特に、分散投資や長期運用は投資を成功させるうえで重要なキーポイントです。GPIFの動きに注目することで、良い指針を得られるでしょう。